◆ 2025.01.25
第1回 Aさんの事例(4)/パワハラ不動産営業
【報告者】運営委員・弁護士 丸山 健
Aさんの会社の就業規則に、営業成績不振が懲戒事由とされ、最終的には懲戒解雇もできるようになっていたことを述べました。そのことを根拠に、Aさんは、会社の配転パワハラは営業不振懲戒解雇の代替としてなされたものでそもそも違法だと主張し、その主張は、会社を動かしたと思います。
さて、このような主張ができたのは、Aさんが就業規則をその改正部分も含め、キチンと持っていたからでした。そればかりでなく、Aさんは、当初の募集要項や労働条件通知書、会社から配布された様々な資料を保管していましたから、こうしたものがなければ、到底、第1回で述べたような労働審判の調停結果も得ることができなかったと思います。
ときおり、パワハラを受けたという労働相談のなかで、自分がうけた暴言等の事実の存在について、当然に認められることを前提として話される方がいます。しかし、裁判の中では、会社や相手方は平気でうそをつくし、事実を否定してきますから、パワハラはそれを受けたと主張する労働者の側で主張立証しなければなりません。それゆえに、パワハラと闘うには、丁寧な証拠収集から始めなければならないのです。
また、パワハラの相談を受けている中で、それ以外の労働契約上、労働基準法上の問題が発見され、そのことを取り上げることによって、パワハラ問題を含めた全体が解決に至ることも、しばしばあります。
従って、前記した募集要項、労働条件提示書、就業規則といったものにとどまらず、毎月の賃金明細書、源泉徴収票、タイムカードの写し、会社からの配布物、会社への提出物、事実経過を記載したメモなど、キチンと整理作成して保管しておくことが必要不可欠です。やはり、闘うには、それなりの準備と覚悟が必要不可欠です。
(5・最終)へつづく
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