労災認定についての相談/例-1

我が社では残業が長くなると社長から注意されるため、午後8時頃になるとタイムカードを押してから残業する社員(女性)がいます。もし彼女が帰宅途中に交通事故にあった場合、事故発生時刻とタイムカードの退社時刻にかなりの時間差ができると思います。労災にならなくなるのでしょうか。
労災に該当します。
労災保険法は、通勤災害を給付対象としていますが(7条1項2号)、「通勤」というためには、「就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復すること」が必要で、経路を逸脱し、または、往復を中断した場合には、「通勤」とは認められません(同条2項3項)。残業を終えて、直ちに帰宅する途中での災害が「就業に関」するものであることはいうまでもありません。本問のケースは、通勤災害として取り扱われるべきものです。
これに対し、仕事を終えてから、業務に関係のない所用で、職場に居残り、その後に帰宅したような場合には、往復を中断したということになります。ただし、往復の中断のあった場合でも、「当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。」(労災保険法7条3項但し書き)として、中断が軽微であれば、中断があっても、通勤災害となります。
通達にあるケースとしては、職場内のサークル活動や労働組合の活動のために会社に残って、その後の帰宅途中に災害に遭った場合です。この場合、中断が最小限のものといえるかどうかについては、残っていた時間が「社会通念上就業との関連性を失われるほど所定の就業終了時刻とかけ離れているか」が判断のポイントとなります。通達では、3時間ほどサークル活動を行ってからの帰宅について通勤災害として認めないとし、労働組合の業務で2時間居残ってからの帰宅について通勤災害として認めています。また、やはり、労働組合の業務に関して、業務終了後、事業所内で労働組合の業務を2時間5分程度行って帰宅途中に事故に遭ったケースで、就業との関連性が失われたと思われるものの超えた時間がわずかであること、滞留時間に拘束性、緊急性、必要性があることなどから、通勤災害であるとしたものがありますので(昭49.11.15基収1881号)、通達では概ね2時間を目安として、中断が最小限のものとして、通勤災害に取り扱っているものと思われます。この点は、居残った時間と用事の内容によって総合的に判断されます。
以上を前提にすると、質問のケースについて、タイムカードを押した以降は就労をしておらず、業務に無関係なことで居残っていたとして、通勤災害として取り扱われないという心配が出てくるのかもしれません。  しかし、会社にいる間に就労していたかどうかは、タイムカードを押したかどうかだけで判断されるわけではありません。タイムカードを押した後も仕事をしていたということは、自分で勤務時間を書いたメモ、メールの通信記録、カギを守衛さんに返すときの記録がなど他の方法によっても明らかにすることができます。
社員の出退勤時刻を正確に把握するのは本来事業主の役割で、そのためにタイムカードがあるのだと思いますが、残業が多いと立場上問題とされたりするため、質問にあるように仕事の途中でも、タイムカードを押してしまうことがあるのかもしれません。そのような人には、毎日自分で出退勤記録をつけることを勧めます。正確な出退勤記録をつけることは、通勤災害だけでなく、長時間労働が原因で病気になったときの証明にも使われます。